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EU 競争法の域外適用 (2015年6月15日)

EU 競争法の域外適用

弁護士 中島 康平

EU 競争法の適用に関しては、事業者がEU域外においてEU競争法に違反する行為を行った場合であっても、EU 市場で実行された場合(implementation)、または、EU 市場に即時かつ実質的な効果を及ぼすことが予見可能である場合(qualified effects test)にはEU競争法が適用されると考えられています。

現在、グローバルサプライチェーンの深化に伴い、世界各国の複数の企業が製品の供給に関与している場合に自国の競争法をどこまで適用できるかが日本を含めて複数の法域で争われています。液晶ディスプレイ(LCD)パネルカルテル事件において、欧州委員会は、カルテル対象製品について、①EEA 域内において第三者に直接販売された場合(direct EEA sales)、②域外において違反事業者のグループによって最終製品に組み込まれた上で、当該最終製品がEEA 域内の第三者に販売された場合(directEEA sales through transformed products)、③域外の第三者に販売され最終製品に組み込まれた上で、EEA 域内において当該最終製品が販売された場合(indirect sales)という3 つの分類に整理した上で、いずれの場合であっても、事件に対する管轄権を有し、すべての売上額を制裁金の基本額の算定に用いることができることを前提とした上で、抑止力の観点から十分であるとして①及び②の売上額のみを算定の基礎として採用しました。このようなアプローチは後続のブラウン管カルテル事件においても採用されています。

LCD パネルカルテル事件の欧州委員会の処理は普通裁判所において基本的に支持されましたが、上級裁判所において裁判官を補佐する法務官は、2015 年4 月30 日、②の分類について、最終製品のEEA 域内の販売によって、構成部品を対象とするカルテルが実行されたとはいえず、また、EEA 域内における即時的、実質的かつ予見可能な効果が立証されていないとして、②の売上額を制裁金の基本額の算定から除外すべきとの見解を示しました。法務官の意見は、裁判所を拘束しないものの、権威と事実上の影響力を有するとされており、今後、最高司法機関である上級裁判所がいかなる判断を下すかが注目されます。

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