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国際契約における紛争解決条項 (2015年6月1日)

国際契約における紛争解決条項

弁護士 貞 嘉徳

国際取引交渉においてポイントとなる内容の一つに紛争解決条項があります。任意の履行を期待できない場面では、最終的な紛争解決は執行を通じてしか実現することができないため、執行可能性という観点からの検討が不可欠です。

外国仲裁判断の承認・執行の条件を定めるニューヨーク条約は、140 ヶ国以上の国が締約国となっています。締約国は、外国仲裁判断をニューヨーク条約に従い、承認・執行しなければならず、とりわけ裁判所による判決の相互保証が存在しない国(例えば、中国)の企業との間の契約においては、仲裁による紛争解決を選択することが好まれる傾向にあります。一方当事者の所在国における裁判所による紛争解決では公平性の点でどうしても懸念を払拭できないということが、仲裁を選択する根本的な背景事情となっています。

国際的な仲裁機関としてよく知られているのは、国際商業会議所(ICC)、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)、米国仲裁協会(AAA)、アジア地域では、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)、香港国際仲裁センター(HKIAC)、中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)があります。仲裁機関の選択においては、政治情勢等も考慮に入れる必要があり、例えば、最近では、一時国内情勢が不安定となった香港を本拠地とするHKIAC を仲裁機関とすることが避けられる傾向がありました。

これら仲裁機関を用いる仲裁のほか、ad hoc 型と呼ばれる仲裁機関を用いない仲裁もあります。

仲裁の最大のメリットは、その手続の柔軟性であり、仲裁人の選定をはじめ、紛争当事者に大幅な自主性が認められます。日本は、現在、環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめ、複数の経済協定を交渉中であり、本年2 月には、モンゴルとの間で経済連携協定(EPA)を締結したことが発表されました。今後、益々、国際的な経済活動が活発化する中、紛争解決条項を検討する機会も増えてくることが予想されます。仲裁人の人数、手続・仲裁地・言語・仲裁機関の選択など、検討事項は多岐にわたります。個々の事案に応じた適切な仲裁条項を定めるよう検討することが必要です。

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