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中小企業の知的財産を融資につなげる支援の取組み (2013年7月1日)

中小企業の知的財産を融資につなげる支援の取組み

弁護士 田中 敦

1 制度について
本年5 月、特許庁が、中小企業による知的財産を活用したビジネスについての評価書の作成支援制度(以下「本制度」といいます。)に基づく融資案件の公募を開始しました。本制度は、自社の有する知的財産の価値を利用して資金調達をしたいという中小企業のニーズと、知的財産の適正な評価を行う人材が金融機関に不足している実情を受け、中小企業への融資拡大のために創設されたもので、昨年度に試行的に実施され、本年度から本格的に実施されることとなったものです。

2 支援の仕組み
本制度に基づく支援の仕組みは以下のとおりです。

①支援対象となる融資の公募
特許庁が、金融機関を対象として、本制度に基づく支援を希望する融資案件を公募します。金融機関による応募にあたっては、中小企業等への融資であること、融資対象企業 の内諾を得ていること等の応募資格があります。

②調査会社による調査・評価書の作成
特許庁と提携する調査会社が、融資対象企業が有する知的財産を踏まえたビジネスの価値を評価し、「知財ビジネス評価書」(以下「評価書」といいます。)を作成します。 評価書作成にかかる費用は、特許庁がその全額を負担します。

③金融機関への提供
調査会社から金融機関へ評価書が無償で提供され、当該金融機関は評価書に基づいて融資対象企業への融資判断を行います。

3 今後の課題等
本制度の利用により、金融機関が、中小企業の適正な事業価値を把握できるとともに、経営改善のアドバイスやビジネスマッチングにも評価書を活用できるというメリットがあります。他方で、本制度で評価対象となる知的財産は、特許、実用新案、意匠、商標に限られています。中小企業による特許出願件数は全体の12%程に過ぎず(平成26 年11 月現在、特許庁調べ)、技術流出を防ぐために自社技術を特許出願せず営業秘密(ノウハウ)として管理する中小企業も多く見られます。そのような営業秘密や、登録が権利発生の要件ではなく権利の存否判断が難しい著作権等については、本制度に基づく支援が受けられないことが今後の課題といえます。

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