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景品表示法違反に対する措置命令への対応(21.Jul.21)

景品表示法違反に対する措置命令への対応

弁護士 倉本 武任

 

1.はじめに

消費者庁が景品表示法(以下「景表法」といいます)の定める優良誤認表示(景表法5条1号)に当たるとして措置命令を発する事件が増えているようです。景表法5条1号は、商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であること示す表示等を禁止しており、同条に違反する行為があるとき、消費者庁長官は、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為の再発防止のために必要な事項等を命ずることができます(7条1項、措置命令といいます)。意に反して、かような命令を受けた場合、事業者としてどのように対応すれば良いのかについて、あまり説明したものがないので、ここでご紹介いたします[1]

 

2. 措置命令に至るまでの手続

事業者の広告表示に景表法違反の疑いがあると判断した消費者庁又はその委任を受けた公正取引委員会(景表法33条2項)は調査を開始します。調査の中で、消費者庁等は、優良誤認表示であるか否かを判断するために必要であれば、商品・サービスの効果、性能に関する表示について、期間を定めて裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を事業者に求める場合があります。事業者がこの期間内に合理的な根拠を示す資料を提出しない場合(又は提出しても合理的と認められない場合)は、対象となる表示が景表法5条1号に該当する優良誤認表示とみなされることになります(景表法7条2項、「不実証広告規制」といいます)。効果があるか否かの立証は消費者庁にとって容易でないため、同庁の立証軽減のために認められた制度です。消費者庁において事業者に対して、措置命令を下すべきと判断した場合には、当該事業者に対して措置命令案とともに弁明の機会の付与の通知が行われます(行政手続法13条1項2号)。事業者としては出されるであろう措置命令に対して不服があれば弁明書を提出し、消費者庁において、弁明を踏まえてなお、措置命令をすべきと判断した場合には措置命令が発令されます(景表法7条1項)。

 

3.消費者庁から措置命令が発令された場合の対応等

(1)措置命令の効力の停止を求めることの重要性

措置命令の内容に不服のある事業者は措置命令の取消を求めて提訴[2]することになりますが、これだけでは措置命令の効力は停止しません(行政事件訴訟法25条1項)。そして、措置命令に従わない、または命令に違反することになれば、違反行為をした者に対して刑事罰が科されることとなり、また、当該事業者に対しても3億円以下の罰金刑が科されるため(景表法38条1項1号、36条)、これを防ぐために事業者は,措置命令の効力の停止をも求めておく必要があると考えられています(行訴法25条2項)。この執行停止の申立をするには、本案となる措置命令の取消を求める訴訟を先に、若しくは同時に提起しておく必要があります(行訴法25条1項)。

 

(2)執行停止が認められる為の要件

執行停止が認められるには、①重大な損害を避けるため緊急の必要があること(行訴法25条2項)、②公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときに該当しないこと(同法4項)、③本案について理由がないとみえるときに該当しないこと(同法4項)との要件を満たす必要があります。要件①の「重大な損害」を生じるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するとされています(行訴法25条3項)。また、要件②、③については、相手方に主張・疎明の責任があるとされています。

 

(3)執行停止申立事件の要件の判断

上記要件③については、消費者庁が前述2の不実証広告規制によって資料の提出を求めた場合には、事業者としては、期限内(おおよそ15日間)に広告内容が客観的、合理的根拠となる資料を示せるように、予め準備しておく必要がありますが、この申立において、資料が合理的であることまで証明するのではなく、提出した資料が本案で審理して貰うに足りることが示せればよいと考えられます。上記要件②については、消費者庁は措置命令をホームページ上に公表することから、消費者に一定の告知がなされるため、一般消費者の誤認を排除するという目的は一定程度達成されているとして、裁判所に、②の要件充足を認めて貰えるケースは多いと考えられます。そこで、大きな争点となるのは要件①となります。この損害の要件については、平成16年改正により、行訴法25条2項の文言が「回復困難な損害」から「重大な損害」に変更されています。金銭賠償で回復可能な場合には「重大な損害」に該当しないとする考えもありますが裁判所はかような考えを採用していないと思われます。また、「重大な損害」は現に生じていることを指すわけではなく、将来の損害の発生が問題となる点は注意が必要です。逆に取り返しのつかない重大な損害が既に生じてしまっていると措置命令の執行停止を求める意味がないと判断されてしまう可能性もあり得る[3]ので、措置命令が発令されれば、急ぎ訴訟及び執行停止申立でもって対応する必要があるのです。

 

(4)執行停止が認められなかった場合の対応

措置命令の執行停止が認められれば、事業者は、本案である取消訴訟の審理に注力できますが、執行停止が認められなかった場合でも、措置命令に従わないまま、取消訴訟の審理を進めることも考えられます。措置命令の取消しを求める本案の係属中、これに従わなかったとして、前述の刑事罰が直ちに執行されないように思われますが、リスクも大きく、事業者としては難しい判断を迫られるように思います。また、事業者としては、措置命令には従ったうえ、本案である取消訴訟の審理を進めることも考えられますが、①措置命令に従った後は、本案である取消訴訟の訴えの利益がなくなるのではないかという問題[4]や、②措置命令に従ったことで、不当表示を自認したと評価されないかといった問題が起こり得ます。事業者としては、いずれにせよ、困難な問題に直面することになります。措置命令を争う事業者としては、まずは執行停止の決定を得られるように最善を尽くすことが必要です。消費者庁から調査を受けている場合には、かような点も含め、事前に準備をしておくことが重要となります。

以上

 

 

[1] 本稿は当事務所がある企業の代理人として、措置命令の取消を求めて東京地方裁判所に本案となる訴訟を提起すると同時に措置命令の執行停止を求めたのに対して、2021年6月に措置命令の執行停止を認めるとの決定を得ることができたことに基づき、ご紹介していますが、本案となる訴訟が係属中のため、詳細をご報告出来ず、エッセンスだけとなることご容赦ください。

[2] 訴訟の提起の他に、消費者庁長官に対して審査請求を求めるという方法もあり(行政不服審査法2条)、それぞれ単独でも、両方の申立ても可能です。しかし、審査請求については処分をした消費者庁長官自身が判断するため、適切な判断が期待できるかという問題があります。

[3] 東京地裁平成27年4月20日決定

[4] 措置命令に従った後でも、措置命令のうち「今後、同様の表示を行わないこと」との命令の取消しを求める必要性はあると思われ、措置命令に従うことで、直ちに訴えの利益がなくなるわけではないと考えられます。

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