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弁護士 苗村博子

また日本でも新型コロナの感染者数が増えてきて気がめいりますね。休日もあまり外出できず、おうち時間が増えた中での楽しみの一つはドラマを見ることになりました。私は基本的には日本の法廷物のドラマはみません。裁判のシーンなどで間違いが多く、見ているとストレスを感じるからです。

夏には楽しみだった「半沢直樹」の最新シリーズも終わり、堺雅人さんのドラマをもう少し見たいと思ったところで、禁を破って、堺さん主演のリーガルハイの1、2のシリーズを続けて視ることにしました。失礼ながらこの作品は日本の法廷物といえないほど、大きく実際の裁判手続きや実体法とかけ離れていて、またコメディ仕立てにしてあるのでストレスがありません。特にシーズン2は、死刑を宣告された女性の最高裁での弁護を底流に、職務著作(作品の中では職務発明的扱い)、近隣住民間のトラブル、パワハラ、環境問題と住民間の対立など、その時々の法律時事問題を扱っていて,訴訟で対立する代理人弁護士は,口頭弁論期日と思われる手続で,主張を口頭で互いに繰り広げ,これこそ本当の弁論主義だと思わされます。

死刑を求刑する中で,検察官(松平健さん)が,民意が死刑を求めている,裁判員裁判は民主主義を体現していると述べるのに対し,弁護側の主人公弁護士は,司法に民主主義を持ち込むのは司法の自殺だと主張します。司法とは何かという根源的なテーマをさらっと言われてしまい,コミカルなドラマの中の奥深さにはっとさせられます。

裁判員裁判を否定するつもりはありませんが,本来司法は,「法の支配」を具現化するシステムで,立法機関が民主主義,多数決で決めて,行政がこれを実行した際に現れる多数決原理の不具合を修正する機関だと思っています。米国では,連邦最高裁判事は大統領が指名し,上院が助言と同意をして任命されるので,勢い最高裁が政治化するきらいがあるのは,トランプ大統領が新しい判事の任命を急いだときにも騒がれたところです。日本では漸く本来の法の支配による裁判を確立しつつある最高裁がそんなことにならないよう,法の支配を貫ける最高裁判事が今後も選ばれていくことを祈ります。

弁護士 苗村博子

東京五輪の組織委員会会長が橋本聖子氏に変わってから約1か月,このNQをご覧頂く頃,聖火リレーは始まっているでしょうか?体を動かさないと頭も動かない[i]私は,競技を見るのも好きで,世界の平和の為の運動の祭典を是非とも開催して欲しいと思う一方,その大会に注ぐお金を,コロナ禍での貧困と闘う為に使ってもらいたいとも考えてしまいます。当初固辞されたという新会長の就任挨拶は,しかし,りんとして,国民の理解の上に大会があり,そのために全力を尽くすとの決意を述べるもので,委員会が大きく変われるのではないかとも思えます。熟慮,努力の末の選択であれば,私たちは,いずれでも受け入れられるような気が致します。

それにしても,女の人は話が長い,競争するから皆発言するとの前会長の失言はあまりにも酷いものでした。男女で話の長さに差があるのか,統計的なことはわかりませんが,私は自分の話が長いことを自覚しているので,この発言の報道を,自分事として,苦々しく聞きました。女性代表ではないですが,ではなぜ私の話が長いのか,少し自己分析してみたいと思います。

一つ目は多角的な目で物事を見ているから,というとそんな格好のいいものではないと言われそうですが,物事を線で見るのでは無く,様々に散らばる点の集合体として見ていて,そのつながりを説明するために話が長くなるような気がします。

二つ目は聞いている人を驚かせたいから。話の結論とは全く違うところから話を始めると聞き手には,何の話?とつまらないながらも集中力を持って聞いていただける,簡単にいうと関西人の「落ち」を求める会話という事でしょうか?

三つめは忖度をしないからです。私が子供の頃,女の子達は,男の子達が要求された社会性を身につけることを良しとされず(家庭にはいるからということでしょうか),忖度を学習しませんでした。そこで,大人になってからも,議事進行を優先させて欲しいなと司会役の人が思う会議でも,必要だと感じたことは話すようになっています。

一つめと三つめは女性の特徴かもしれません。しかし,このいずれも,忖度が先にきて,必要な話をしないより,少々会議が長くなってもそのほうが良いように思っています。これからも話が長い私ですが,どうぞよろしくお願い致します。

 

[i] アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」第8章参照

弁護士 苗村博子

入管法の改正案が2021年の通常国会に提出されましたが,採決に進まず,廃案となりました。在留特別許可申請の新設,被収容者の処遇に関する手続の整備,収容に代わる監理措置制度の創設など,入管での長期の収容に対応するための制度もあるものの,刑事罰を含む,送還に応じない者に対する退去命令制度の創設など問題も多く,改悪ではといわれる中,3月に不法滞在で収容されていたスリランカの女性が名古屋の入管施設で亡くなられた件の真相究明を巡り,野党が審議拒否したことが採決をしない直接のきっかけとなりました。現在の入管法を改正する必要はわかるものの,方法論が間違っている?ということで更に検討が必要となるかと思います。

日本は,この10年,野党の力が余りに弱く,強行採決,忖度政治に続き,政官癒着や,懐かしき?金権政治まで表面化する事件が続き,私たちをうんざりさせてきました。

ただコロナ禍が問題となってきた2020年の国会以降,強行採決では無く,世論が高まった法案について,閣議決定されても,不提出となったり,採決されずに廃案となるケースが出て来ました。昨年の臨時国会で承認された種苗法の改正も,農家の自家増殖権を巡って有名人からの反対意見が出される中,2020年の通常国会での決議は見送られました(ただ,昨秋の臨時国会では,ほとんど議論無く可決されています)。

コロナ禍で急に検討しなければならなくなった課題が多く,審議に時間が取れない,国会を紛糾させたくないというのが根底にあるのかとも思いますが,国会の外でわき上がってくる声が少しでも届いて,自主的な動きになったのであれば,反対論も含めていろいろな話を聞いてみるという,民主主義の根幹の部分が機能しているのかとも思います。

この数年,世界でも民主主義と専制主義について多くの問題が提起されてきました。ロシアのクリミア併合,香港の言論の自由の封殺,ミャンマーの軍事クーデターなど,民主主義からほど遠い行為が,この21世紀になって頻発しています。また民主主義の牙城と信じていたアメリカでは連邦議会が市民によって襲撃されるなど,信じられないことが起こる中,新型コロナ感染を押さえ込むには,専制主義の方がよいという人たちまで現れてきています。問題が多いとされた入管法改正が見送られたのは,少し嬉しいトピックかと思います。

ただ,同じ法案採決の問題でも,今国会で議論が検討されていたLGBT理解増進法案が審議されなかったこと,その中で与党内にLGBTが種の保存に背くといった意見があったことが影響したのであれば,とても残念です。この問題については頁をめくって是非,札幌地裁の令和3年3月17日判決のコラムをご覧ください。

弁護士 苗村博子

外出自粛の中、Netflix で続けて見たのは、The Blacklist Designated Survivor というアメリカのシリーズドラマです。後者は邦題が『サバイバー:宿命の大統領』という、ワシントン DC の連邦議会が爆破され、大統領や上下院議員のほとんど全てが被害に遭って死亡、そのようなときのために designateされた住宅局局長が大統領として米国を指揮するというドラマです。荒唐無稽なようですが、今年の連邦議会襲撃を見た後では妙にリアルに感じます。両方のドラマに共通するのは、米国で、国際的なものも含め社会問題とされる事象を織り交ぜていることです。取りあげられる話題は、銃規制、移民問題、アフガン撤退、薬物依存、LGBTQ の問題、人身売買、企業と政界の癒着、人工的なウイルスによるバイオテロなど、どれも私たちが感心を寄せる必要のあるものばかりです。その中でも、日本ではほとんど議論されない児童婚の問題を 2 つのドラマとも取りあげています。いずれも主人公が、何らかの理由で壮年男性と面談、その男性が中学生くらいの女の子を伴っているので、可愛いお嬢さんですねというと、「いえいえ、隣にいるのは私の妻です」と紹介し、主人公は児童婚の実体に気付くというものです。

ユニセフの定義によれば、18 才未満の婚姻を児童婚としています。日本では現在、女子は 16 才以上ですが、来年 4 月からは男女とも婚姻年齢が 18 才以上となり、また日本では結婚する 2 人の意思が合致していないと婚姻は成立しないため、日本が批准していない、女子の意思に反した婚姻を禁じる奴隷制度廃止補足条約にいう児童婚はなくなるといってよいと思います。他国の多くの児童婚は、女の子がその対象で、かつ親の意向などで倍ほども年齢の違う男性と結婚させられ、母体として十分な成長を遂げていないにも関わらず、妊娠、出産し、その後の学業が続けられなくなったり、ひどい時には命を落としたりするものです。コロナ禍で児童婚は増えているとの報道があり、また米軍のアフガン撤退により同国で、さらに女の子の教育の機会が奪われ、このような児童婚の対象となることが増えるのでないかと心配になります。

この問題は、国連の SDGs の目標でも2030 年までに撲滅が呼びかけられていますが、強制労働や人身売買と同じ根を持つものの、宗教、因習、法律、貧困、女性差別などと強く結びついていて企業の活動や国際機関の支援でもなかなか解決の糸口が見つからないのが悔しいところです。女の子一人一人に意思決定権があることを、児童婚を認める社会に伝えていくことから始めるしかないのでしょうか?

弁護士 苗村博子

60 歳を超えて、初めてお弁当作りを始めました。コンビニやスーパーで買ったお弁当はそれなりにおいしいのですが、気になるのがプラスチックの包装箱。一週間お弁当を食べて、その分の箱を廃棄すると相当な量になります。そんな時に見たのが、2021 年 11 月 7 日放送の NHK スペシャルの『グレート・リセット』という番組でした。

産業革命時代からの温度上昇を 1.5 度までに抑えることの絶対的な必要性を教えてくれる番組で、これ以上に気温が上昇してしまうと、永久凍土が溶け、封じ込められていたメタンガスが大気中に放出され、熱帯雨林が消失し、さらに温度上昇が加速。その後どんなに手を尽くしても温度上昇を抑えることのできない状態になってしまうというのです。

牛や豚の育成から排出される二酸化炭素やメタンガスを抑えるための代替肉の推奨から、地下深く温室効果ガスを閉じ込めるプロジェクトまで、フランスでは、市民の代表に提案してもらい、二酸化炭素の排出量の多い飛行機に替わり、いくつかの路線を夜行列車に替えるプランなど様々な取り組みが紹介されていました。中でも問題視していたのが、家庭から排出される温室効果ガスの削減が難しいことでした。家庭内の冷暖房費や、焼却時に大量の二酸化炭素を出すゴミの削減が課題とされていたのです。

番組を見終わってから、ゴミの分別をより注意深く行うようになり、行きついたのがお弁当作り。まず、環境負荷を減らそうと、油汚れが落ちやすいという角のまるいお弁当箱を買いました。朝は、花の水やりや朝ヨガで忙しいので、週末にお惣菜を作りためて冷凍します。冷凍に向かない食材もありますが、代替肉で便利なのは、一度凍らせて作ってある高野豆腐。百均で買った製氷皿よりちょっと大きめのお惣菜冷凍箱に入れて保存しておきます。あとは庭からのお野菜を電子レンジで温めて出来上がり。今は茎ブロッコリーと芽キャベツが日替わりです。便利さを手放しての生活のグレートリセット、どこまでできるのか、少しずつでも挑戦したい一年の始まりです。

弁護士 苗村博子

前号の42号で触れた「グレート・リセット」は、気候変動対策のため、どれだけ人間が便利さを諦められるかについて語られるキーワードです。前号をお届けしてから 1 カ月もしないうちに、私たちは、21 世紀にあって、20 世紀前半の第 2 次世界大戦前に戻ったような専制国家による他国への一方的な侵略というリセットに直面しています。このリセットが起こってはならないことは、第 1 次世界大戦の勃発から約 100 年、第 2 次世界大戦から約 80 年で学んだはずでした。

ロシアにも反戦運動をされている方もいれば、単に偏った情報しか得られないために、ウクライナで行われている残虐行為を知らない人もいるという事実からすれば、これはプーチン氏の戦争であって、ロシアの戦争ではないというのは、真実でしょう。ましてや私たちの戦争ではないと日欧米、いわゆる民主国家といわれる国の人々は思っています。しかし、プーチン氏を含む G8 の組成を許し、北方領土交渉のため、プーチン氏の来日を許した私たちには本当に関係ないのか、自問自答するばかりです。

第1次世界大戦後の国際連盟も、第 2 次世界大戦後の国際連合も、結局かような侵略行為の開始も、拡大も止めることができていません。ゼレンスキー、ウクライナ大統領の日本の国会での演説にあったように、国際的な秩序を強権的に奪ってはならず、奪おうとする者を止める何らかの組織が必要ですが、私たちは何か良い仕組みを考え付くことができるのでしょうか?いずれにしてものんびりと仕組みを検討している余裕は、ウクライナの人々にはありません。人道という意識だけでもプーチン氏の中に覚醒することを祈るばかりです。

追伸、かような話題に私事で恐縮ですが、このウクライナ侵略が起こり、法律家としての私自身は、本当にしょんぼりしております。法律は、相手方も含め、人は理性と協調で理解しあい、お互いを拘束しあえることを前提に作られた仕組みです。この土台を崩されてしまうと立ち向かう術を持たないこと、その無力さをかみしめています。

弁護士 苗村博子

ウクライナ侵略が 5 ヵ月目に入り、支援疲れがささやかれるようになってしまいました。心の痛むつらい映像等もだんだん見なくなり、ニュース離れが進んだともいわれています。近頃は私もおさぼり気味で、録画までして見るテレビ番組は NHK 総合の映像の世紀 バタフライエフェクト、E テレのターシャ・テューダーの庭からの 30 分番組と一週間のニュースをまとめてみるサンデーモーニングくらいです。

バタフライエフェクトの新シリーズは、この原稿を書いている 6 月 28 日現在で 11 作が放映されましたが、いずれの回も素晴らしく、様々な重大な事象とその前の蝶の羽音とのつながりを教えてくれます。特に印象的だったのは、ベルリンの壁の崩壊とメルケル首相誕生から退任までの物語でした。メルケル前首相を含む 3 人の女性の東ドイツでの市民間の密告社会の息苦しさから、その開放への半生が鮮やかに描かれていきます。そして、ベルリンの壁の崩壊は一種の誤報から始まったという、それまで知らなかった事実も良い方向へ向かったミステイクとして記憶されました。10 回目のアラビアのロレンスの回には、ナチスによるホロコーストの映像、その後のユダヤとアラブの対立、パレスチナ難民の発生、テルアビブ空港自爆テロ事件に始まる互いの報復の連鎖が、陰鬱に描かれていきます。なぜ、大虐殺の被害者であるユダヤの人が、アラブの人を殺さなければならないのか、なぜ、日本人までかかわりながら、テロという形でのパレスチナの独立主張が必要なのか、その対立を生んだのがロレンスかどうかはともかく、対立を平和的に解決することの難しさを痛感します。最後はイスラエルとパレスチナの間の壁にバンクシーが絵を描くことで、人々の関心を呼んでいるとささやかな希望を残してこの回は終わりました。昨日のキューバ危機の回、こちらは一人の信念を持ったソ連のスパイ(最終的に米国のスパイであることを裁判で自ら認め、死刑判決、銃殺刑となります)の存在、第二次世界大戦中に日本国土への空爆を指揮し、これを悔やんでいた時の米国の国防長官が、キューバのソ連基地への先制攻撃を強く主張する元上官に最後まで反対したこと、ケネディ大統領の同調、そしてソ連側にも、潜水艦からの核攻撃を止めた副艦長がいたこと等、様々な人々の平和への勇気ある行動が、第三次世界大戦、核戦争を阻止したことを教えています。しかし、その後平和運動を進めたケネディ大統領が翌年暗殺された映像が流れ、この暗殺が、大統領のこの動きに反対する何らかの組織的なことだったのかを暗示するかのように番組は終わります。

20 世紀に起こった悪しき出来事を、平和裏に解決する方法を見つけたつもりだった私たちは、21 世紀になって今、香港、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナの問題などを突きつけられています。再度 20 世紀を見直すべき時に、良い番組が続いてくれていることを少し嬉しく思っております。

弁護士 苗村博子

皆さん、今回は、少し趣向を変えて、新人をご紹介したいと思います。と申しましても、新しい弁護士さんでも秘書さんでもありません。

アバターとまでは言えないのですが、商子(しょうこ)さんと来人(らいと)君というウェブ上のキャラクターです。

製造会社に新入社員として入社したしょうこさんは、知的財産部に配属されました。T弁護士の後輩なのですが、大学で知的財産権を学んだことはなく、T先輩にいろいろ質問してきます。すぐに仲間に入りたがるN弁護士も加わって、知的財産とはどのようなものなのか、どんな種類のものがあるのか、重要判例などもご紹介しながら、T弁護士、N弁護士としょうこさんの会話形式でのレクチャー?が展開していきます。

らいと君は、かつてN弁護士の個人情報保護法のクラスで講義を受けたそうです。今の若者らしく、果敢に起業をしたというらいと君もいろいろ知的財産のことを聞きたいようで、N弁護士の事務所にやってきては様々な知的財産法の質問を投げかけます。

N弁護士やT弁護士は時に二人の鋭い質問や、基本的な質問だけれど、答えるのがとても難しい質問にたじたじとする場面もありつつも、秘密保持義務に反しないように気を付けながら、これまでの取り扱った事件の苦労話も交えて二人に話をしていきます。

まだまだ、おはなしは始まったばかりで、

https://www.chizai.info

 

にアクセスいただけるとその内容がご覧いただけます。

新入社員のご研修や、いまさら聞けない・・・という中堅の皆様にも楽しんでいただけるようなウェブサイトにしたいと考えております。

ご推察のとおり、N弁護士編は苗村博子が、T弁護士編は田中敦が執筆しております。なお、しょうこさん、らいと君、N弁護士、T弁護士の作画は、当事務所の職員で、職務著作ということで、著作権は事務所のものとなり、万が一に備え、著作者人格権の不行使も約束してもらっています。こんな話もT弁護士が、らいと君に教えていく内容の一つとなると思います。

末永く、可愛がってもらえるキャラクターに育ってくれるといいなと思っております。ぜひ、一度アクセスしてみてください。