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「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正の意義 (2016年1月15日)

「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正の意義

弁護士 立川 献

1.概要
本年4 月1 日(一部は平成30 年4月)より、改正された「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下「本法」といいます)が施行されます。
近時、障害者雇用の拡大と質の向上のための雇用対策が推進される中、今回の法改正も実施されました。
本法は、労働者数50 名以上の企業について、2%の障害者の雇用義務を規定するなど、改正法に至るまでにいくつかの重要な改正が行われてきました。
改正法においても、障害者の雇用促進に関して重要な点が改正されていますのでご紹介させていただきます。

2.本法における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務(本法34 条から36 条の6)の新設募集・採用活動にあたり、障害者と障害者でない者との間で均等に機会を与え(差別の禁止)、人員配置等の労働条件その他の処遇の決定に当たり、障害者であることを理由として、不当な差別的取り扱いをしてはならない(合理的配慮の提供義務)、と定められました。
具体的な対応は、個々の障害者の障害の程度を考慮することが求められますが、厚労省の事例集によれば、例えば採用活動において、視覚障害者の応募者に、個別に、図やグラフ等を用いた資料に基づいた説明を行ったり、採用後において、定年退職後の再雇用社員を当該障害者の担当者として、業務に関する相談や指導を受けられる体制を整えたりする等の実施方法が考えられています。
また、苦情処理に関し、事業主が自主的解決を行う努力義務が課されています。障害者の雇用に関して生じた紛争につき、各地の労働局の委任を受けた紛争調整委員会による調停という制度も整備されました。

3.法定雇用率の算定基礎の見直し(本法37 条他)
法定雇用率の算定基礎に、精神障害者が加えられました。ただ、この改正の施行は平成30 年4 月1 日からですので、平成25 年4 月1 日から平成30 年3 月31 日までは、身体障害者及び知的障害者を算定基礎として法定雇用率を計算することとなります。

4.罰則等
厚生労働省や労働局からの勧告や指導がある場合において、それに違反したり、虚偽の報告をしたような場合には、罰則の適用があり得ます。障害者の雇用はコンプライアンス上も重要な課題といえます。

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