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下請法に基づく製造委託費及び遅延損害金の請求 (30.Jan.17)

下請法に基づく製造委託費及び遅延損害金の請求

弁護士 苗村博子

はじめに

本件は、当事務所で担当した、判例雑誌等には掲載されていない事件判決です。原告であるご依頼者は、靴や衣料品の委託製造を行っている会社で、被告は、繊維雑貨の販売、服飾雑貨の仕入販売を行っている会社です。
はやりのブーツの一部に瑕疵があったことを理由として、他の種類のブーツや特に問題のないジーンズの製造委託費まで払ってくれない状態が続き、ご依頼者は提訴しました。約3年弱の訴訟期間を経て、第一審判決が下り、判決では、14.6%の遅延損害金を得たことから、ご依頼者には、相応の満足を得ていただきました。
下請法が適用できる場合には、同法に基づく遅延損害金請求も有効であることを示した例だと思われますので、その一部を皆さんにご紹介します。

事案の概要

原告は、被告との間で衣料品、靴類の製造委託に関する取引基本契約を締結し、商品代金の支払時期等についても合意していた。原告は、被告に対し、ムートンブーツ等を生産し、売却した。ムートンブーツについては、原告は、元々ショート丈1万5000足、ロング丈3万5000足を売買することを合意し、納期も決めていた。この契約締結時及びその後も製品の仕様が書面で通知されることはなかった。原告は、5回サンプルを作成して提示したが、被告はその都度、サイズや素材などを修正、変更を原告に対して求めた。6回目のサンプル提示でようやく被告は製造を依頼した。その後、被告は、ロング丈、ショート丈の数量バランスについて利幅の大きいロング丈を減らすように求めてきた。そのようなこともあり、納品時期は遅れたが、原告は、ロング丈1万1900足、ショート丈1万4700足を納品した。納品後、被告は、不良品が含まれているとして、原告に修理を要求した。原告は、修理の後、被告が受領してくれることが前提であると返答した。その後、被告は合わせて、2万6620足を原告に返品した。被告は、返品に際し、原告から納品を受けたムートンブーツについて全てを検品することはなく、返品の中には、未開封のものも多数存在した。被告はショート丈のブーツ5100足を顧客に売渡していたが、その顧客から600足余りを縫製不良があるなどとして返品を受けていた。

主な争点

争点としては、①納期遅れはあるか、②納品されたブーツに瑕疵はあるか、③遅延損害金の率がどのように適用されるかであった。

裁判所の判断

①原告に納期遅れがあるかについては、裁判所は、第1回の納期の時期でもまだ、値段交渉を行っていたことなどから、原告が主張するとおり納期変更があったものとして、納期遅れはないと判断した。②また、製品の瑕疵については、被告の顧客から返品されたものについては、瑕疵があると認めたが、単価が低いこと、多少のほつれ等はあるが、瑕疵があるとは評価しがたいこと、被告は、原告が納品したブーツについてその全部を開封したわけではなく、全部に瑕疵があったと推認することができないとした。③の遅延利息に関しては、まず、被告の不履行に対しては、6%の商事法定利息が適用されること、また原告の資本金が300万円、被告の資本金が6400万円であることから、被告は親事業者、原告は下請事業者に該当すること、また本件は、下請法2条1項の「製造委託」に該当し、本件の売買代金は、下請代金(同法2条10項)に該当するとして納品日から60日を経過した以降は14.6%の遅延利息を認めた。

考察

下請事業者と認定された原告は、本件で被告が、安価に単価設定し、かつ単価変更を認めないままに生産コストの増加を伴う数量、仕様、納期の変更を強要し、一方的に返品や受領拒否を行ったという典型的な下請けいじめであることを主張していました。被告が、社名公表を伴う下請代金の減額の禁止に違反するとする勧告処分を受けていたことを原告が主張していたことも、裁判所が、原告に有利な判断をしてくれた一因かと思います。
遅延損害金の起算点については、裁判所は、原告が瑕疵のない商品の履行の提供を行ったにも関わらず、被告が受領拒否をしたことで納品に至らなかった場合には、履行の提供の日を納品日として、この日を遅延損害金の起算日として判断してくれました。結果、納品日から下請法の遅延損害金の起算点までの60日間は商事法定利率の6%で、その後は、14.6%という非常に高率の遅延損害金を認めて貰うことができました。
被告は控訴し、その後和解しましたが、控訴期間中もそれなりに、ゆとりをもって対応できたのは、この高額にのぼる遅延損害金が考慮されることが期待できたからです。下請法の高率の遅延損害金は、一種の懲罰的利息ですが、これが下請法違反を行う親事業者には有効に働くことが分かった事件でした。